もう一年前になるが、群馬自然史博物館でひらいた「ヴンダーカマー展」に、日大芸術学部の学生のつくった「キマエラ(人工合成動物)」が多数出品され、入り口を飾った。
そのなかに、鄭秀泳(ジョン・スヨン)君という韓国の人がつくった「1000年後の三匹の子豚」という不思議な作品があった。長さが1.5メートルほどある大作で、主に紙を素材として製作されたものだった。わたしはこれがすっかり気に入り、出展後のキマエラ・オークション計画(ほんとうは会期終了後に学生の作品をオークションにかけて、市民に買ってもらう予定だった)がくずれたこともあり、この作品を購入することにした。
その後、一年はジョン君が個展などを開いたため、ずっと貸し出していたのだが、このたび我が家に運ばれてきた。ジョン君みずから大型車を運転し、ミラノに5年いたというデザイン雑誌の副編集長を務める奥さんと一緒に、作品を搬入してくれた。大きいが、持ち上げると、とても軽い。
さっそく仕事場の一隅においてもらい、改めてまぢかで作品を鑑賞した。ジョン君の説明を聞くうちに、これはほんとうに大作だと実感した。
この不思議な作品は、いわば童話『三匹の子豚』の後日談を視角化したものである。ジョン君は、童話の後日談を作品として表現せよ、という卒業課題として取り組んだそうだ。その構想は、次のようなものである・・・・
今から1000年後、三匹の子豚は頑丈な家を建てる作る技術を飛躍的に発達させたが、子豚を食べようとするオオカミだって、負けずに進化していた。子豚の長兄が未来に豚の国を構築し、地下世界に潜むオオカミ軍団から身を守るために、地面に生えた植物や樹木を生きたまま使用するエコロジーな建物を建てた。一方、次兄の子豚はそれに飽き足らず、新素材の金属でさらに頑丈なドームを製作し、国境の周辺に強力なロボットを配備した。
そして、末っ子の賢い子豚は、地上から離れて宇宙に浮かぶ未来建築の完成に挑んでいる。
しかし、そんななかでも、地下世界のオオカミは地上を攻撃する計画を極秘理に進めている。あちこちで、ロボットは襲撃されており、地価と地上を区切る地表にも、危険なほころびが生まれだしている・・・
あとのストーリーは、作品の細部を眺めながら、各自で想像してみると楽しい。まさに、神が細部に宿り給う超大作である。これでも、まだ未完成の状態で、あとのディテールはおいおい追加してくれるとのことだ。
部屋を暗くして、この作品に見入ること30分、なんだか「スターウォーズ」を眺めているような気分になった。
ジョン君はこれから活躍するだろう。11月には、こうしたデコレーションを多用した、おもしろいカフェを、奥さんと一緒に高田馬場でひらく予定だそうだ。また、デザイン会社も立ち上げて、韓国焼肉店の店内美術を請け負っている。楽しみだ。
ジョン君たちが帰ってから、私はしばらく闇のなかで「三匹の子豚」の未来に想像をめぐらせた。
そのなかに、鄭秀泳(ジョン・スヨン)君という韓国の人がつくった「1000年後の三匹の子豚」という不思議な作品があった。長さが1.5メートルほどある大作で、主に紙を素材として製作されたものだった。わたしはこれがすっかり気に入り、出展後のキマエラ・オークション計画(ほんとうは会期終了後に学生の作品をオークションにかけて、市民に買ってもらう予定だった)がくずれたこともあり、この作品を購入することにした。
その後、一年はジョン君が個展などを開いたため、ずっと貸し出していたのだが、このたび我が家に運ばれてきた。ジョン君みずから大型車を運転し、ミラノに5年いたというデザイン雑誌の副編集長を務める奥さんと一緒に、作品を搬入してくれた。大きいが、持ち上げると、とても軽い。
さっそく仕事場の一隅においてもらい、改めてまぢかで作品を鑑賞した。ジョン君の説明を聞くうちに、これはほんとうに大作だと実感した。
この不思議な作品は、いわば童話『三匹の子豚』の後日談を視角化したものである。ジョン君は、童話の後日談を作品として表現せよ、という卒業課題として取り組んだそうだ。その構想は、次のようなものである・・・・
今から1000年後、三匹の子豚は頑丈な家を建てる作る技術を飛躍的に発達させたが、子豚を食べようとするオオカミだって、負けずに進化していた。子豚の長兄が未来に豚の国を構築し、地下世界に潜むオオカミ軍団から身を守るために、地面に生えた植物や樹木を生きたまま使用するエコロジーな建物を建てた。一方、次兄の子豚はそれに飽き足らず、新素材の金属でさらに頑丈なドームを製作し、国境の周辺に強力なロボットを配備した。
そして、末っ子の賢い子豚は、地上から離れて宇宙に浮かぶ未来建築の完成に挑んでいる。
しかし、そんななかでも、地下世界のオオカミは地上を攻撃する計画を極秘理に進めている。あちこちで、ロボットは襲撃されており、地価と地上を区切る地表にも、危険なほころびが生まれだしている・・・
あとのストーリーは、作品の細部を眺めながら、各自で想像してみると楽しい。まさに、神が細部に宿り給う超大作である。これでも、まだ未完成の状態で、あとのディテールはおいおい追加してくれるとのことだ。
部屋を暗くして、この作品に見入ること30分、なんだか「スターウォーズ」を眺めているような気分になった。
ジョン君はこれから活躍するだろう。11月には、こうしたデコレーションを多用した、おもしろいカフェを、奥さんと一緒に高田馬場でひらく予定だそうだ。また、デザイン会社も立ち上げて、韓国焼肉店の店内美術を請け負っている。楽しみだ。
ジョン君たちが帰ってから、私はしばらく闇のなかで「三匹の子豚」の未来に想像をめぐらせた。